■海へと!■



「これホントに八奈(やな)のバイク?」
「そうだよ。何で?」
「いや…別に…。」
せかされるままにあたしは八奈の後ろに乗った。

なんか…違う気する。

告白された相手があのハーレーの持ち主で舞い上がった。
でも今はもうバイクから降りたい気分。

最初このハーレーを見た時は
もっとカッコイイと言うか、似合ってたのに
今の八奈は、なんか乗らされてる感、あるよね…。

早まったか…。


「遅いな。八奈のヤツ。」
ちょっと電話って、ドコまで行ってんだよ!
目の前には、ハーレー。
バイクはカッコイイのになぁ。
「お?六藤(むとう)じゃん。何してんの?」
「八奈を待ってんの。」
「ふ〜ん。お前さ、マジであいつと付き合ってンの?」
「え?」
なんか今一番聞かれたくない質問かも。
答えたくない…。
空を見上げる。
「あぁ〜あ!」
何やってんだろ。あたし。
「天気…いいね。どっか行きたいなぁ。」
"今"じゃない、何処かへ。
「ほんじゃ、海でも行くか!」
「えぇ!?」

ドルルルルル

「ちょっと!何であんたが八奈のバイクのキー持ってんの!?」
「え〜?だってコレいじ(整備)ってるの俺だぜ?」
「だからってキーを持ってる理由にはなんないじゃん!」
「固いコトは言いこなしっつーことで!」
ニッカリ笑顔でバイクにまたがる姿は意外にもさまになってる。

いい感じじゃん。

後部座席に乗り込むと慣れた感じでバイクを走らせる。
「よく借りるの?バイク。」
「あぁ、たまぁ〜〜〜〜に、な。」
「たまぁ〜〜〜〜に?ホントは内緒で乗りまわしてるんでしょ!?」
「へへへ」
あきれたヤツだなぁ〜。
でも…。
もしかして最初にあたしが見たハーレーは…、コイツが乗ってた?
八奈より全然似合ってる。
運転もコイツの方が上手いかも。
赤信号で静かに止まる。
「お前さ〜、八奈やめて俺と付き合わねぇ?」
「え?」
「八奈よか俺といた方が楽しいぜ?」
「あんた、八奈の友達でしょ?本気!?」
「俺はいつでも本気だっつーの!」
信号が変わると勢いよく飛び出す。
「ちょ、急に何!?」
しがみつきながら叫ぶけどスピードは落ちない。
ガンガン走る。

…もしかして、告白しちゃって照れてる?

信号で止まっても振り向かない。
やっぱりそうなんだ。
カワイイとこあんじゃん!
笑いがこみ上げてくる。

気が付くと目の前には 海。
ホントに海に向かってたんだ…。
この潮の香りがなんともいえない。
気持ちいい。
「まさか本気で海に来ちゃうとはね〜!」
「おれはいつでも本気だっつったろ!」
「八奈のヤツ超怒ってるよ、きっと!」
「んぁ?いんだよガソリン満タンにして返しゃ〜!」
「満タンって、そんなお金 持ってンの!?」
「持ってるわけね〜だろ!」
「かわいそ〜に、八奈のヤツ!」

少しでも身体を離すと爆音で声も聞こえない。
アレ?うるさいのはバイクじゃなくてあたしの心臓?
こんなに空が蒼く海が翠だったとは知らなかった。
快適なスピードで全てが楽しくなっていく。


「ごめ〜ん、八奈!あたしやっぱ十勝と付き合うわ!」



■あとがき■